第4話以降は歯周病と全身疾患の1つ1つの関係についてお話させていただければと思います。第4話ではまずは”歯周病と糖尿病の関係”についてお話できればと思います。
まずは糖尿病とは…
インスリンの作用不足による慢性高血糖を特徴とする代謝異常をきたし、その結果、血管障害などの合併症を引き起こす疾患です。糖尿病には大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病の2つのタイプがあります。
≪1型糖尿病≫
インスリンを合成・分泌する膵ランゲルハンス島β細胞の破壊・消失がインスリン作用不足の主な原因となっている糖尿病。
糖尿病患者の5%がこの1型である。
≪2型糖尿病≫
インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす素因を含む複数の遺伝因子に、過食、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子および加齢が加わり発症する。
糖尿病患者の95%がこの2型である。
糖尿病の方は本当に多いです!
糖尿病が強く疑われる人と可能性を否定できない人を合わせると全国で2210万人いるとされています(2007年実態調査)そして、その数は急激に増加し、今や成人の5人の1人は糖尿病またはその予備軍だとされています。
〈メタボリックドミノ〉
歯周病は糖尿病の6番目の合併症とも言われております。歯周病がひどくなると、糖尿病が悪化し、また歯周病が悪化するというような負のサイクルにはいってしまいます。
このメタボリックドミノという表は、歯周病が糖尿病をはじめ様々な病気に関わってくることを説明した表でもあります。
≪歯周病菌が糖尿病(2型糖尿病)に影響する機序≫
最初に、歯周病菌によりTNF-α(炎症性サイトカイン)が生産され、それをインスリン感受性細胞が受け取る。(図の①参考)
それにより、インスリンをインスリン感受性細胞が受け取りづらくなってしまう。(図の②参考)
その結果、インスリン感受性細胞によるグルコースの取り込みが低下してしまい、いつまでたっても血糖値が下がらないといった現象が起こってしまう。(図の③参考)
そして、
歯周病治療をするとTNF-α(炎症性サイトカイン)が減少してきます。
歯周病治療を行うことにより、歯周病菌を減少させ、より少ないインスリン量でも効率よくグルコースを取り込むことができるようになります。
難し話になってしまいましたが、以上の理由から、歯周病予防で糖尿病の合併症を予防できるのです!
簡単に言いますと、歯周病は炎症を引き起こす物質を作ってしまい、それが血糖コントロールに悪影響を及ぼしてしまうので、糖尿病の方は歯周病の治療や予防が大切なのです!
歯周病をお持ちの糖尿病の方は、お口な中の歯周病菌をなるべく少なくすることが大切です。そのため、お口の中の状態を位相差顕微鏡(オーラルクロマ)や位相差顕微鏡などの検査でみさせていただき、その方にあったむし歯・歯周病プログラムを組ませていただき、糖尿病の合併症の発症を予防させていただければと思います。また、ご自宅でのケアが一番大切ですので、セルフケアの仕方(バクテリアセラピーなど)の指導をさせていただければと思います。
次回の第5話は“歯周病と誤嚥性肺炎の関係”についてご説明させていただければと思います。