多くの方が歯科医院に行かれて、「歯ぎしりをしてますね!」と言われているかもしれません。
では、なぜ”歯ぎしりをしているか”を教えてもらったことはありますか?
多くの方がストレスからとだけ説明されているかと思います。
歯ぎしりは多くの原因から起こるので、これが原因とまではなかなか断定はできませんが、いくつかその原因は明らかになってきています。
まず、歯ぎしりをしてしまう自体なぜいけないかと言いますと、”第10話”でお話した通り、歯ぎしりはある特定の歯だけに「力」が過度にかかってしまいその歯が削れたり、その部分のみが歯周病になってしまったりしてしまいます。または、歯ぎしりで寝るときに音がうるさい方もいらっしゃるかもしれません。
「歯ぎしり」と聞くと、こういった悪影響でけが頭に浮かんでくるかも知れませんが、そうではありません。ある意味必要な行為なのです。それに付いてご説明させていただければと思います。
歯ぎしりをする理由は諸説あるかと思いますが、今回は2つだけご説明させていただければと思います。簡単にその2つをご説明いたしますと…
①ストレスを解消するため
②寝るときに呼吸をするため
①のストレスを解消するためとはどういう事かといますと、これは神奈川歯科大学の佐藤貞雄先生(矯正科教授、歯学部長)の研修会でも本でも書かれていますが、“顎”というのはもともと情動器官という器官から進化した部位なのです。情動器官というのは感情をコントロールする器官ということです。
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例えば、ストレスがたまるといっぱい美味しいものを食べたくなりますよね。この顎を動かして食べるということ自体がストレスを解消する行為であったりするわけです。物を食べるというのは意識化で行いますが、無意識化でも歯ぎしり(ブラキシズム)をすることにより人はストレスを解消致します。
私は歯ぎしりをしていないと言われる方がいらっしゃいますが、歯ぎしりは音をする場合と音がしない場合があるので、ほとんどの方(96%)は歯ぎしりをすると言われております。それ自体は、日中のストレスなどを解消する行為ですので問題はありませんが、音が鳴る歯ぎしりの場合は歯を傷つけていたり、歯周病になる原因になったり致します。
音が鳴る歯ぎしりの場合はほっておくと厄介なことになるので、検査して治療をおすすめいたします。
②の寝るときの呼吸をするためというのはどういう事かと言いますと、扁桃腺が腫れていたり、アデノイドがあったり、鼻炎だったりしますと、のどの辺りの空気を肺に送る道(気道)が狭くなってしまっています。寝ているときにこの気道が狭いままだと十分に呼吸をすることができません。
そのため、ヒトは無意識のうちに気道を広げようとします。どうやって気道を広げようとするかと言いますと、無意識に下の顎を前に突き出して気道を広げて呼吸をいたします。
ちなみに、こういった方の歯はどうなっているかといいますと、下の前歯が異常なすり減り方をしています。これも歯ぎしり(ブラキシズム)の一種です。
夜中に酸欠にならないために行っている歯ぎしりですので、大切な行為なのです。しかし、この状態を放置してしまうと下の前歯に異常なすり減りがおきてしまいます。また、下の前歯のすり減りを治しても何度も壊れてしまいます。
異常なすり減りを防止するためにも、検査をして適切な治療をおすすめいたします。
①②のような原因で歯ぎしり(ブラキシズム)を行っています。なので、良い面も悪い面もあるということを知って頂けたかと思います。
音が鳴る歯ぎしりなどは特に歯周病を悪化させるげんいんともなりますので、長くお口を健康に保つためには、歯ぎしりへの対策はもちろんのこと、歯周病の管理がとても大切になってきます。
夜中のブラキシズムを検査するブラックスチェッカー
夜中に寝るときに赤いシートを付けて寝ることにより検査できます。
良い面もあるのですが、悪い面がある場合だと結構悩まれてしまうかも知れません。ストレスだからしょうがないと諦めていらっしゃる方がいらっしゃいましたら検査をさせていただき、改善できるようにお手伝いさせて頂ければと思います。